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ネットニュースに連日「ひろゆき」氏が出てくる「裏」の事情。

高橋宏和(H4卒)
date:2021/12/19

「それあなたの感想ですよね。データとかあるんですか」
道行く小学生がそんなことを言っていた。
ネットニュースを見れば連日のように「ひろゆき」氏が社会事象を「斬って」いるし、なぜこんなに「ひろゆき」氏的な物言いがウケているのだろうかと考えていくつかの仮説を得た。
 
だいたいああいう「論破(したつもり)ゲーム」はよくないですよね。相手が黙ってもそれはただ単に「こいつと話しても疲れるだけだから構わんとこ」ってだけだし、生産的でも創造的でもなく無駄にエネルギーを消費するだけで地球に優しくないからグレタさんに叱っても
らおう。
 
個人的には、若い時期にはまずスタンダード、オーソドックスな思想をある程度おさえておいて、その上でああした「ひろゆき」氏的物言いをこっそりフレーバーやスパイスとしてたまに取り入れるくらいがちょうどよいと思っております。少なくとも「ひろゆき」氏的なものを思想の主食にしてはいけないと思う。
さて、「ひろゆき」氏的物言いがウケている理由についての仮説。
日本人論の古典『日本人の意識構造』(会田雄次 講談社現代新書 昭和四七年)にこんな一節がある。
〈日本の特徴は日本人の意識に存するところの裏文化の優越にある。わたしたちの間では表文化はウソの世界だと考えられている。〉(前掲書p.57)
文化には「表」と「裏」があり、日本人の意識の中では「表」は虚飾とウソ、「裏」にこそ人生の真実があるとされているのではないか、というのが会田氏の主張だ。
たとえば芭蕉の「奥の細道」。裏道をトボトボあるいたからこそ芸術となった(のではないかと会田氏は主張する)。「裏」通りにこそ人生の悲哀と真実がある、と日本人は感じる(のではないかと会田氏)。
 
前掲書によれば、ここらへんの感覚は欧米人(欧米人といっても北欧とアングロサクソン国とラテン国とアメリカ東海岸・バイブルベルト・西海岸ではそれぞれ全然違うだろうが、ひとまずここでは欧米人としておく)には全然ない(という)。
「裏」はどこまでいっても「裏」で、正統な「表」の優越は揺らがない。
 
どちらがよいかの価値判断はしないが、こうした日本人の「裏」文化のほうに真実がある(のではないか)という感覚が、トリックスター「ひろゆき」氏をもてはやす遠因ではないだろうか。なんとかかんとかの「裏」の事情、とか書いてあると読みたくなるじゃないですか。
 
また、備忘録としてドナルド・キーン氏が「日本は英雄がいない国である」「日本は画一主義だが何故か奇人の存在を許す国である。平賀源内とか」と指摘しているのも書き添えておきたい(『日本人と日本文化』司馬遼太郎 ドナルド・キーン 中公新書 昭和47年。p.151とp.177あたり)。
 
以上、「ひろゆき」氏的な物言いがなぜこんなにウケているのかをつらつら考えた。その理由として、
①日本人はもともと「表」より「裏」に真実があると感じる価値観がある。トリックスターであり異端である「ひろゆき」氏にも、「裏」を知っている人こそ真実を知っていると期待しているのではないか。
②日本人は英雄は好まぬが奇人は好む。
という2点がmy仮説であるが、それあなたの感想ですよね。データとかあるんですか。