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2012年卒の國本英樹さんが國本農場を(北海道)栗山町でスタート!

麻布流儀編集部
麻布流儀編集部
date:2022/6/14
2012年卒の國本英樹さんが國本農場を(北海道)栗山町でスタート!




麻布流儀編集部です。

以前、麻布流儀のオンラインイベントに参加してくださった2012年麻布卒の國本英樹さん。その時「農場を始める準備中」とお聞きしていましたが、

2022年4月、北海道は栗山町にて「國本農場」をスタートさせたということでインタビューいたしました!

<國本農場/國本英樹 プロフィール>

1993年生まれ、横浜育ちの一人っ子。

2012年 麻布高校卒。

2012年 現役で北海道大学に入学。農学部に進学して農業経済学科協同組合学研究室で農家や農協を対象にしたフィールドワーク、社会経済学を研究。将来の農協を担う若手農家の実態調査など。個人的にも酪農家を中心に道内各地を訪ねてまわる。

そのまま大学院(農学院)に進学して2018年に修士修了。大学院の授業として催す「北大マルシェ」で妻と知り合う。(北大マルシェ:毎年8月に農学部前で全道の生産者、加工業者が軒を連ねて販売するイベント)

2018年に農林水産省に入省。消費・安全局農産安全管理課で農薬取締法の改正を中心とした仕事に従事。他に肥料や遺伝子組み換え作物の管理を行う規制部局で総合調整の仕事。

1年経たず2018年12月に転職を決意。当時付き合っていた妻と話し合って結婚を前提に退職、就農することに(妻は農水省でも同期)。私が先に辞めて北海道へ。

2020年3月、妻も農水省を退職して北海道へ。二人で夕張郡栗山町へ移住。入植4代目の清水農場で研修開始(その間の立場は公的には地域おこし協力隊)。

2022年4月、独立して自営業として営農開始。現在に至る。トマト、長ねぎ、とうもろこし、ブロッコリー、にんにく、さつまいも、小麦などを栽培。

 

Q1 麻布時代の部活や活動、自分はどんな子だったか教えてください!

國本 私は「ザ・麻布生らしくない麻布生」だったと思います(笑)

元々2月1日は逗子開成を受けるつもりで、受験の日まで麻布に行ったことがなかったんですが、「まさか受かるとは」という感覚でした。

入学して同級生と触れ合うと、どんな分野でも好きなことを突き詰めている人がたくさんいてかなわない人ばかりでした。自分はそこまで好きなことややりたいことがなかったので在学中は結構そういう人に揉まれて焦っていた時期もありました。何となく周りの雰囲気を見て流されやすい学生だったのかなと。周りについていきたいけど埋もれてしまうのも嫌だ、みたいな感覚がありました。だからというか、麻布に対する愛着は他の人よりないと思います。

それでも入学してオリエンテーリング部に入ってから部活どっぷりでした。上の代はインターハイで優勝したりすごい人たちがいて、でも普段の雰囲気は緩い部活で居心地がよかったです。体力づくりと称して行っていたサッカーも楽しかったです。

北大を受けたのもオリエンテーリング部のある大学だったからという理由もあって、そういう意味で結構影響を受けたのかもしれません。残念ながら大学に入ってからは大学祭運営の方にはまって部活はフェードアウトしてしまいましたが…

私の在学中は文・運実の不祥事が多くて2回運動会が中止になっています。さらに部活内でも上の学年で飲酒事案があって、停部処分を受けました。だから学園全体でも個人的にも「自由ってなんだ」という問いが常に付きまとっていたように思います。「自主自律」は後に大学で学ぶ協同組合の精神そのもので、研究テーマへとつながっていきます。



Q2 農業に興味を持ったきっかけなど含め、ご自身にとっての農業について教えてください!

國本 
身近に農業があったわけでもありませんし、最初は本当に何となくでした。きっかけは中2の夏休みの宿題で杉浦先生から「大学の学問を調べよ」という課題が出て農業経営学を調べたのが始まりでした。当時はリーマンショック明けで穀物価格が高騰してエジプトでデモが起こったり世界的に食料問題が取り上げられていたのが気になったんだと思います。

そこから農学部に興味を持って、最初は実験系に進もうと思っていましたが、農業経営学研究室のあるのが農業経済学科であると北大に入ってから知りました。農学部の7つの学科の中で唯一文系ちっくでフィールドワークが中心のため、せっかく北海道に来たのなら色んな農場、牧場に行きたいと思い農経を選択しました。

農業というと高齢化や自給率の低下で課題だらけ、古い体質で儲からないといったマイナスイメージを浮かべる方が多いと思います。私もそういう課題を何とかしたいと思って農学部に来たところがありました。しかし、実際の農家に会ってみると若い後継者がバリバリ働いていて、都会では見られないような子だくさんで、新築したいい家に住んでいました。だから、もっと良い所に着目してあげないと、と学生ながらに思いました。

消費者がもつイメージともギャップがあって、有機・オーガニックだから良いものなのかといったことや、ゲノム編集は安全なのかといった問題も農家側がもっと発信しないといけないなと、その辺は農家がまだまだ下手くそなところです。

外から農業をみる目線、農家から消費者に発信しないといけないことの双方にギャップがあるのが今の農業の現状だと思います。

一方で、そういう問題が起こるのも、食が生命にとって欠かせないもので、個人の思想や生き方、生活に密着しているものだからなのかもしれません。それゆえに、農業がもっと農業をやっていない人にも身近で、顔の見える関係をつくって生産活動をやる人以外にも農業に関わっていく人が増えていけば課題だらけの農業というイメージも克服されていくのではないでしょうか。

作物をつくる誇りと人とつながる喜びを感じられるポテンシャルをもった仕事だと思います。


Q3 実際、農家になろうと決めたきっかけは?

國本 
大学時代は常に道内中の農家を練り歩いていました。だから、大学を出る時には「現場感」が身についてしまっていて、それを農水省で活かせればよかったんですがデスクに座っているだけでは満足できませんでした。

また、農水省にいてどうしても机上で農業を語るということに違和感があって、農業をやってもいないのに農業を語るということに自分の中で納得ができませんでした。

そんな時に、学生時代から通っていた野菜農家さんの姿が浮かんで、自分でやればいいじゃないかと思い立ちました。幸い、妻(まだ結婚していませんでした)が一緒にやろうと言ってくれて結婚することになり、話が本格化しました。

あと、これは冗談半分ですが、いつか日本が財政破綻した時に一番強いのは農家だと思いました(笑)



Q4 約二年間の準備期間があったとお聞きしていますが、実際どんな準備をされたのですか?

國本 2年間、受入農家(親方)の下で研修生として農作業をしながら機械の操作や作物管理を教わっていました。親方夫妻と親方のご両親の4人に加えて私たち夫婦で作業を分担して、管理作業、収穫、出荷準備ほぼ全てに関わります。また、地域の行事(農家の寄合や農協の人との打合せ等)にも同行させてもらって地域に顔を覚えてもらいます。

そうすると、「あそこの研修生にあの農地どうだ」とか「使わない機械があるから持っていかないか」といった話が来るようになります。その中で独立する土地が決まり、機械や道具をもらってきて独立の春までに準備をします。

農地にしても不動産屋で斡旋してもらえるわけではないので、顔の見える関係をつくって信頼を得ないと手に入りません。それが農業の世界です。

こういった話は研修の2年目に本格的に動き始めて、土地の売買をしたり、親方に時間をもらってハウスを建てる、買い取った施設の補修をするなど必要な作業を進めます。うちは2月の長ねぎの種まきが最初の農作業だったので、何としてもそれまでにハウスを建てて水やりの施設や播種に必要なトレイなどの資材を用意する必要がありました。

農場開業の初期投資が1,300万円くらいですが、そのうち3分の1は中古で近隣の農家さんから売ってもらったもので、トラクターなど通常より破格に安く譲ってもらいました。また、金額に載っていないタダ同然でもらった道具なども買えば何万もするようなものばかりです。農家の倉庫にはそういう宝が眠っていると同時に、顔見知りになったら見返りに関係なく助けてくれる人たちです。

準備期間は、技術を身につける期間、物理的なものの用意の期間に加えて関係をつくる期間と言えます。



Q5 今後の夢や目標を教えてください

國本 生産者としては、良い作物をつくり続けること。それに尽きます。

一方、農業に関係のない人も多い時代であるので、身近に感じてもらえる取組みをしていきたいです。(先日、友達と会社(一般社団法人)を立ち上げて食育活動をしていくことになりました。)

また、いずれ大学に戻って博士課程を取りたいと思っています。農家と研究者の二足の草鞋が目標です。






Q5 それでは最後に「國本農場」のPRをお願いします!

國本 当農場の一押しはトマトです。植物生理に沿った栽培で、美味しさだけでなく健康を維持する薬草としての野菜をつくって参ります。

後にも先にも麻布出身の農家がいるかはわかりませんが、せっかくの麻布で培ったご縁で皆さまに喜ばれる野菜をお届けできればと思います。




國本農場

北海道夕張郡栗山町日出350番地

https://home.tsuku2.jp/storeDetail.php?scd=0000200234