建物を安く建てる方法
第六話は建物を安く建てる方法です。
建物を建てようと思った時、依頼する一般的なルートは4つあります。
まず住宅メーカー。
TVCM費や営業マンの歩合給、展示場の建築費など、たくさんのコストが乗った建築費となります。
工場生産で安定した品質を保ちますが、現場で施工するのは下請けの職人さん達です。柱や梁といった構造体に、穴を開けて良い場所とそうでない場所など決まっていますが・・・
最近は教育がだいぶ徹底できて来ている様です。
工場生産ですので、実際の建物の強度は「スペック値の通り」となります。
不動産業者
紹介料を工事代金に載せられてしまうだけです。不動産業者は工事会社ではありません。
誰かに何か紹介して貰おうとすれば、紹介料が発生します。
ちなみに住宅メーカーにお客さんの名前を伝えるだけで不動産業者に建築費の4%が支払われる。業界内ではその様な取り決めもあります。
地場工務店
コスト的には一番安いです。
普段、不動産業者の下請けで建売を「激安」で建築しています。その値段で請けてもらう事ができれば、住宅メーカーより最大4割くらい安くなるかもしれません。
ただし、その場合に出来上がるのは建売グレードの建物ですし、相見積を取らなければ、エンドユーザーに対しては大きく利益を載せた見積を提示して来ます。
使う構造部材(木材や鉄材など)が市場流通しているものですので、
法律に基づき、製品のばらつきなどを加味した安全率を前提として建築がなされます。
この安全率の分、建物の構造は「スペック値よりは丈夫」なものになります。
設計費も格安ですが、外注の設計事務所に、受け取った設計費以下の金額で依頼します。
このため、設計についてはあまり良いものは期待できませんし、基本設計図を自社の無資格者(営業マン)に作成させている事も多いです。
設計事務所
(私は設計事務所経営者ですから贔屓目になります。生暖かい目で読んでください)
コスト的には地場工務店に依頼するのがベストなのですが、相見積を取らなくては安くなりません。相見積を取るためには、見積が出来るだけの図面と仕様書が必要になります。
設計事務所に依頼をすると、図面を作成して数社の工務店から工事見積を取る事ができます。
この結果、工務店から「業者向けの金額」の書いた見積書を入手できます。
良い事づくめの様ですが、設計事務所に依頼をする際のデメリット。
「設計監理費が別途かかる。」
・・・これは、細かい打ち合わせができたり、無駄を省く設計をして必要なところにお金をかける事ができる様になる分で、ほぼ相殺できます。
もう一つ、どうにもならないデメリットがあります。
「金融機関受けが悪い」
です。
金融機関は建築をするエンドユーザーが工務店や住宅メーカーに行くことしか想定していません。このため、設計事務所に依頼をすると、融資のタイミングが難しくなります。
この「設計事務所に依頼をするケース」でのみ、金融機関は、
「融資審査の必要資料として確認済証と図面一式、工事請負契約書を出しなさい」
と言って来ます。
これらの資料が揃うのは基本設計が全て終了した時点です。
つまり、それまでに支払う設計費を融資で賄えない。
地盤調査費用や確認申請手数料などの実費も、自己資金で用意する必要があります。
更に、もっと問題なことに・・・設計を受託したものの、設計者の能力不足で予定した建物が設計できず、それでも設計費を返還しないなんて被害に遭う方もいます。その様なリスクも負うことになります。
・・・あれおかしいな・・・設計事務所に対して一番厳しい論評に・・・。
無償で欠陥住宅被害者や建築家に騙された人の紛争解決のお手伝いもしております。
(お金をもらうと弁護士法に触れるので全てボランティアです・・・)
次回はサブリースの仕組みについて書こうと思います。