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「何かやりたいけど何をやったらいいかわからない」「何者かになりたいけどそれが何かはわからない」という若者への無責任な11のアドバイス

高橋宏和(H4卒)
date:2022/9/16

「何かやりたいけど何をやったらいいかわからない」「何者かになりたいけどそれが何かはわからない」。

そんな思いにとらわれたことのある人は少なくない。

青年期特有のものなのか、人生100年時代には周期的に襲ってくるものかはわからない。

若かりし頃の、そうした自分自身に向けてアドバイスするとしたら何というか考えてみた。順不同です。

 

①自分の本当にやりたいことをやれ。

当然ながらこれはナンセンスなアドバイスである。

そんなものがわかっているのなら悩んでいないわけだから。

右往左往、行ったり来たりしながらそうしたものがうまい具合に見つかったらラッキー、そしたらやってみなはれ。

 

②なんでもいいから手当たりしだいにやってみなはれ。

手ごたえは手探りでないと掴めない。

やってみないとわからないことは山ほどあるし、やってみてはじめて自分の向き不向きもわかるというものだ。

キャリア形成における偶発性の持つウエイトの大きさを指摘し「ハプンスタンス・アプローチ」を提唱したクランボルツは、「情熱は行動によって作られる。必ずしも情熱のあとに行動があるわけではない。まず行動があり、そのあと情熱が生まれることも多い」と述べている(『その幸運は偶然ではないんです!』ダイヤモンド社p.76)。

 

③適性なんかそうそうわからない。

自分に何が向いているかなんてのはわからない。

iPS細胞でノーベル賞もらった山中先生も、整形外科医としてキャリアをスタートさせた。整形外科医としては不器用なほうで、周囲から「ジャマナカ」と言われていたという。

大事なことは、ノーベル賞受賞者ですら、キャリアをスタートする前には自分が整形外科医に向いていないことも基礎研究に向いていることもわからなかったということだ。

 

④来た仕事はひとまずなんでも受けてみよ。

自分に何が向いているかは世間が決めてくれる、という考え方である。

漫画家しりあがり寿氏は独立するとき、自分が漫画家として何がやりたいかわからなかったそうだ。

そこで氏のとったアプローチは、来た仕事は何でも受ける、というものだった。

〈きっと何でも受けていれば、自分がダメな分野の仕事はこなくなって、自然に仕事の幅が収斂してゆくだろう。逆にいつまでもいろんな仕事がくればそれはそれでいいじゃないか(略)〉(『表現したい人のためのマンガ入門』講談社現代新書p.164)と考えたという。

この話は、「何をしたいかわからない」段階の話なので、来た仕事を何でも受けているうちに自分自身で適性に気づいたり、仕事の好き嫌いがわかってくればシフトチェンジして構わない。

 

⑤「あるべき社会」「あってほしくない社会」から考えろ。

自分のことはよくわからないが、他人のことはよくわかる。

「何かやりたいけど何をやったらいいかわからない」段階では、思い切って「あるべき社会」や「あってほしくない社会」から考えてみる。

やなせたかし氏がアンパンマンを描いたのは、「世の中で一番の悪は、“飢え”だ」と思ったからだという。アンパンマンが自分の顔を差し出すのは、〈ほんとうの正義というものは、けっしてかっこうのいいものではないし、そして、そのためにかならず自分も深く傷つくものです。そしてそういう捨身、献身の心なくしては正義は行えません(略)〉(『あんぱんまん』収載「あんぱんまん について)とやなせ氏が考えたからだ。

「あるべき社会」や「あってほしくない社会」をまず考え、その実現や回避のために自分ができることやれることを探すアプローチもある。

歴史を振り返れば人類のほぼ全ては食うや食わずで必死でやってきたわけで、「何かを成し遂げたい」「何者かになりたい」というのは言ってみればまあ贅沢な悩みであるわけだけれど、悩みは悩みなわけで、無責任なアドバイスもあってもいいだろう。贅沢の果てに病気になったとしても処方箋は必要なように。

 

⑥自分の本当に好きなことをやれ。

これまたナンセンスなアドバイスである。

こういうことをいう大人は多いんだけど、そんなものがあったら悩んでいない。

というわけで次。

 

⑦自分の好きなもののために動け。

自分が何をやるのが好きかわからなくても、自分の好きなものはわかるかもしれない。

自分の好きなもの、“推し”のために何が出来るか考えてみる。

エイベックスは、もともと社長が自分の好きなダンスミュージックを広めるために輸入レコード販売業をはじめ、それが発展してできた会社だという。

サブカルの王様みうらじゅん氏も、自分が前に出たいからではなく自分の好きなものを広めたいから動くという。

〈私が何かをやるときの主語は、あくまで「私が」ではありません。「海女が」とか「仏像が」という観点から始めるのです。〉(『「ない仕事」の作り方』文藝春秋kindle版1115/1490)。

好きなものがあれば好きなものが、好きな地域があれば好きな地域がより輝くために自分が何が出来るか考えて動く。そんなアプローチがあってもよい。

自分のためには頑張れなくても他人のためには頑張れる。そんな側面が、人間にはある。

 

⑧得意なことをやれ。

「やりたいこと」や「なりたいもの」がわからなくて動けないのであれば、得意なことをやる。徹底的にやる。

亡くなられた瀧本哲史氏が書いていた戦略の中に、「楽勝で出来ることを、徹底的にやる」というものがあった(『戦略がすべて』新潮新書p.95など)。

自分だけのしっかりした人生を歩み、「生(せい)の実感」を得たいのなら、楽勝でできること=「強み」を活かすのがもっとも手っ取り早い。

何故なら、

〈1 人の才能は一人ひとり独自のものであり、永続的なものである。

2 成長の可能性を最も多く秘めているのは、一人ひとりが一番の強みとして持っている分野である。〉から(〈〉内はマーカス・バッキンガム他『さあ、才能に目覚めよう』日本経済新聞出版社p.12。原題は『NOW,DISCOVER YOUR STRENGTH』)。

 

⑨自分が徹夜できることをやれ。

「自分が好きなこと」「自分が得意なこと」もよくわからない場合、自分が何のためなら徹夜できるか考えてみる。

映画『紅の豚』の中に登場する若き飛行艇職人フィオは依頼された飛行艇の設計を夢中でやっているうちに徹夜になる。そこまでして没頭できる飛行艇づくりが彼女の天職であるということだ。

秋元康氏は今の年齢になっても明け方まで作詞するという。作詞が彼の天職であるということだ。

 

自分が何なら徹夜できるのか考えるアプローチは、数年前に気づいた。ある研究者がSNSに「論文書いててまた徹夜になっちゃいました」と書いていたからだ。

論文を書くことは研究のすべてではないが、最重要プロセスの一つだ。

ぼく自身は論文を徹夜で書く根性はなく、当然ながら研究分野では到底勝てないと遅まきながら思い知らされた。

そのかわり、もし必要なら医療機関の運営のためなら徹夜できる。だから今、医療機関の運営に携わっている。

 

このアプローチ、徹夜できることをやれと言っているが徹夜しろとは言っていない。

いやむしろ、〈「徹夜はするな。睡眠不足はいい仕事の敵だ。それに、美容にもよくねえ」〉。

 

⑩まわりの人に聞きまくれ。

友人知人親や兄弟姉妹というのは、あなたが思っているよりもはるかにあなたのことをよく見ている。

「何かやりたいけど何をやったらよいかわからない」「何者かになりたいけれどそれが何かはわからない」、そんな思いにとらわれ身を焦がすほどの状況になったら、素直にまわりの人に聞きまくるのも手だ。

「君は〇〇が向いている」とか「××がいいんじゃない?」とか、それこそ無責任なアドバイスをたくさんもらえるだろう。

このアプローチで大事なことは、だれか一人の人の言うことを盲信しないということと、あくまで決定権は自分で握るということだ。

一人の人の言うことを盲信するとろくなことがないが、あくまで参考意見としてたくさんの人に聞きまくることで見えてくるものがある。

 

さて、話は変わるが、ストレスフルな現代社会を生き抜く、特にメンタル面に効くライフハックをご存知だろうか。

その一つが「心の中にオカマバーのママを住まわせる」というものだ。

グジグジ悩んでいるときも、「な〜に悩んでるのよっ。アンタなりによく頑張ってるじゃない。いいから早くそのボトル空けちゃいなさいよ!アタシも忙しいんだから!」とダミ声で励ましてくれる。

 

というわけで、グジグジ悩む若者に向けてのアドバイスの11番目はこちら。

 

⑪悩んで動けない時は、とにかく時給が高くなりそうなことをリストアップして眺めろ。

え何?「結局、金か」って?

…ま〜だグジグジ悩んでんの?!ほんといいご身分ね!

人間なんてね、有史以来み〜んな食うや食わず、食っていくため食わせるために必死のパッチで頑張ってんのよ!

それが何よ!何かやりたいけど何をしたらいいかわからない、だって!?アンタ何様のつもりよ?

アタシがアンタのために10コもアドバイス考えてあげたんだから、グジグジ悩んでないでとっとと動きなさいよ!

 

「でも…」ですって?!アンタ、アタシに刃向かう気?

まあいいわ、そんな時はね、何でもいいから時給が高くなりそうなものを全部リストアップしてみなさいよ!

何?「オレは金のために働くんじゃない」、ですって?!

アンタね、お金は大事よ!

お金で買える幸福は少ないけど、お金で回避できる不幸は多いんですからねっ!

 

何やるにしたってタネ銭は要るし、そんなにお金要らないなら、有り金全部アタシに寄越しなさいよっ!

だいたいね、仕事するのにかっこつけてお金の話ぼやかすのなんて東京モンくらいよ!

ニューヨークだってロンドンだって上海だって北京だって、仕事の話するなら「で、それなんぼになるん?」ってみんな聞くわよっ!

お金のこと軽んじるんなら、道頓堀に沈めるわよっ!

 

いい?よくお聞きなさい!

「何をすべきかわからない」、なんて時はね、とりあえず時給が高くなりそうなこと全部リストアップしてみなさい。

で、上から順にずーっと眺めていくと、「あ、この仕事、金にはなるけどオレはやりたくないな」とか「あんまり金にならないけど、この仕事ならやってみたいな」とかって心が動くから。

人間ってね、選択肢が与えられると途端に賢くなるから。

 

大事なのはね、ストレス発散も含めて時給計算すること。

8時間やって2万円もらえる仕事があっても、それがイヤな仕事で、仕事のあとキャバクラで1万5000円散財するような仕事じゃ、トータルの時給は下がるからね!

アタシら水商売でも、アブク銭稼いでてもストレスためてホストに貢いでトータル時給下げるコ、たくさんいるからね。そんな仕事なら、時給高いリストのランクは下がるからね。よく考えてリスト作りなさいよ!

 

あとね、いくら時給が高くても、自分で自分が嫌いになるようなことはあんまりやんないほうがいいわよ。

仕事とは縁が切れても、自分自身とは縁が切れないんだから。嫌いになった自分とずっと付き合ってくってのはシンドイからね。

 

とにかくね、心が動かないときは体動かしなさいよ!手を動かして足を動かして汗かいたら、心も動き出すから!「この仕事やりたくないな」でも「この仕事、もっとやりたいな」でもどっちでもいいから、心が動いたら次に進む道も見えるでしょ。

いい?わかったらとっとそのJINRO飲んじゃって!アタシも忙しいんだから!

 

というわけで皆様よい一日を。

ぼくも『脳内マツコ』を回収して、今日も仕事に取り掛かることにする。


(photoACより)



『カエル先生・高橋宏和ブログ』2020年7月21日25日27日を加筆修正)