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オフィスデヤサイって言葉を聞いたことありますか?

麻布流儀編集部
麻布流儀編集部
date:2018/6/15

酒屋で野菜!?

麻布流儀 それは何が問題だったのでしょうか?

川岸 個人への送料を考えると値段が他社とあまり変わらないものになってしまったこと、そして一人の農家さんから出すので、人参ジャガイモ玉ねぎしか作っていない農家さんは種類が当然それだけになってしまう。他社は野菜8種類入っていて、中にはこんな珍しい野菜が入ってます、みたいにできているのに、うちはできない。生産者から消費者の間の市場や流通を省けば、安く提供できるのではという仮説のもと始めたのですが、結局個別に宅配となるとそこのコストが高くなってしまい、野菜の種類は少ない、コストメリットも出せず、値段は変わらないという感じになってしまい、最初のビジネスはダメでした。

麻布流儀 それからすぐOFFICE DE YASAIが生まれるんですか?

川岸 OFFICE DE YASAIの事業コンセプトは起業から1年経たないくらいに生まれるのですが、まだ先です。

最初のビジネスが全然ダメで、一箇所にある程度の野菜の量を送らないと流通費がバカにならないということで、リアルな店舗で野菜を売ることになりました。東麻布にある酒屋さんの一角をお借りして野菜販売を始めました。マルシェみたいにリアルに野菜を売りました。

麻布流儀 さ、酒屋さんでですか?

川岸 酒屋さんにくるおばあさまたちがメインカスタマーでした。酒屋と言ってもタバコ屋も兼ねていて、ハイライト一つ!みたいにタバコを買いに来るお客さんがいたり。そこでまさに八百屋としてやっていた感じでした。最初のビジネスが物流に課題を感じて、一定量を一箇所に送ってそこで売りさばければと思ったのですが、結果、売りさばけませんでした。

麻布流儀 えーっと、野菜の流通って普通はどうなってるんでしたっけ?

川岸 通常は農家からJAさんがやっている集荷場に持ち込まれ、規格に合ったものはJAさんが全部買い取りますとなっています。で、市場で仲卸業者さんが買って行って、今では競りとかないので、価格が決まっているようなのですが、そうやって売られた段階で、JAさんがマージンを取って生産者にお支払いする、という流れですね。そして仲卸業者さんがスーパーや飲食店などにその野菜を売っていく。で、僕らはそういった流通とは違う、生産者から直接買って消費者に売るというのをやっていました。

なので売れれば儲かるのですが売れない。まさか酒屋で野菜売ってるなんて誰も思ってくれないので、その時に生まれたのが僕がよく被っているトマトの被り物です。

麻布流儀 よくあれで登壇したりインタビューしたりされていますが、もともとは客寄せのためのものだったんですね!

川岸 そうなんです(笑)。酒屋で野菜を売っているよというのを分かってもらうために、チラシをまく時に被っていました。その時の主力商品がトマトだったので、トマトを被っていました。リアルな店舗で物を売ってわかったのですが、野菜は生鮮なのでどんどん劣化してきますし、ジャガイモなども翌日芽が生えてきてしまったり。天候で売れる売れないなど左右されますし、結局売れ残ったもののロスが出て、いわゆるスーパーのように人がいっぱい来て売れればよかったのですが。最終的には土曜日だけやろうとなって、土曜日は産直の野菜きます、マルシェやってます、みたいになっていきました。当たり前ですがそれだと売り上げが土曜日にしか立たない。やっぱり厳しいよね、となっていきました。

 

あの有名OBとの出会い

麻布流儀 でもそのことでOFFICE DE YASAIにつながっていくのですね!

川岸 はい。そういう経験の中で、もともと物流ネックを回避するために、人が集まるところに野菜を入れないとダメだよね、人が集まるところとしてオフィスがあるよね、となり、オフィスに入れるという発想が生まれました。2013年の夏までその酒屋さんで野菜を売っていたのですが、5月6月にはもうリアルな店舗で売るというのは見限っていまして、オフィスでの可能性を考えていまして、実験を始めました。麻布のOBで現在Yahoo!アカデミア学長の伊藤羊一さんが当時プラス株式会社にいらしたのですが、プラスさんで野菜を置いて社員が食べてくれるかどうかの実験をさせていただきました。




麻布流儀 あ、あの伊藤羊一さんですね!ぜひ、今後取材させていただきたいと思っていまして(笑)。伊藤羊一さんとはどう知り合われたんですか?

川岸 その酒屋で八百屋状態の時、当時東麻布でシェアオフィスを借りていたのですが、そこがグロービスMBAの卒業生が運営するシェアオフィスで、伊藤羊一さんはグロービス出身でたまたま遊びに来ていらして、「えー君も麻布なの!」となって知り合いました!

麻布流儀 う、うらやましい(笑)。最近そういうシェアオフィスで知り合いましたとか聞くけど、僕が起業した18年前は、そんなものなかった(泣)ごめんなさい、話逸れましたが、そうやって知り合った伊藤羊一先輩の会社でOFFICE DE YASAIの実験が行われたんですね!

川岸 はい、そうなんです。そもそも会社の中で野菜を食べるということがないので、需要が果たしてあるのか?金額とか値段設定以前に、オフィスに野菜を置いたら食べるのか食べないのかを実験しようということになりました。酒屋で売っていた時の主力商品であったミニトマト+実験なので、別で入手した野菜を織り交ぜて置いてみました。もちろん実験なのでタダだったということもあるのですが、数キロ持っていた野菜が即売してくれました。当時事業部のトップだった伊藤羊一さんが「野菜置いたから食べたいやつ来なよ」とアナウンスだけしてくれて、そうしたら、瞬間風速的にあっという間に無くなって(喜)。これはニーズがあるとわかって、これはオフィス向けを考えてみようと固まり始めました。



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