飲み会はポットラックパーティーでありサッカーである。

photoACより
唐突だが、飲み会はポットラックパーティーでありサッカーである。
ポットラックパーティーでは、みなで簡単な料理を持ち寄りシェアして食べる。
同じように、飲み会では各自が話題を持ち寄りシェアして楽しく過ごす。
だから飲み会は、話題のポットラックパーティーなのではないか。
そしてまた、飲み会とは話題のサッカーでもある。
誰かがフィールドに蹴り出した話題を誰かがキャッチし、しばし自分で転がしたあと別の人にパスする。そしてその人もまた、しばらく自分でドリブルしたあと他の人にパスする。
さて、楽しくない飲み会というのはどのようなものだろうか。
話題のポットラックパーティーである飲み会で、誰も話題を持ってこない。
話題が無いからしーんとしている。
沈黙に耐えかねた者がしびれを切らして無理やり話題を提示する。誰が一番早く沈黙に耐えられなくなるかを競う、沈黙のチキンレース。
上っ面の会話が何ターンか続く。
そして沈黙。
実は、誰も話題を持ち寄らない地獄の飲み会を回避する方法がある。
ええとこの店を使うのだ。
ええとこの店の価値は実はそこにある。
料理も酒もそりゃあ良いだろうし、お値段も良いだろう。
だがしかし、ええとこの店というのは、料理や酒だけではなく話題もサーブしてくれるのだ。
寿司屋の大将、和食の板前、フレンチやイタリアンのギャルソン、ボーイは、地獄の沈黙飲み会にそれとなく話題を提供してくれる。
「この魚はね、どこどこで獲れたやつで」「この時期美味しいものは」「◯◯という野菜を××したもので」などなど、などなど。
沈黙の飲み会に時折り投げ込まれる救命浮き輪。
これでしばらくはしのげる。
沈黙のチキンレースに限界だった参加者は、人知れずほっと胸を撫で下ろす。
では、盛り上がる飲み会とは何か。
話題というボールが参加者の間でうまい具合に回る飲み会だ。
参加者は話題というボールがパスされたらしばらくの間ドリブルし、また誰かにパスする。
もし「ウケる」というゴールへの軌道が見えたら、自分でゴールしてもよい。
あるいはパスカットしたり話題というボールを奪いに行ってゴールを決めてもよい。あまりおすすめはしないが。
よくないのは延々と一人で話題というボールをドリブルすることだ。
いわゆる「自分のことばかり話してオチがない」というヤツ。
延々と一人でドリブルするならオチというゴールを決めてくれ。
そうでなければ程良きところで他のメンバーにパスを回してくれ。そうトルシエも言ってた。
しかしもっと悪いのは、話題というボールを飲み込んじゃうヤツ。これは困る。
「この間、仕事で札幌に行きましてね。Aさんは札幌行ったことあります?」(話題というボールのパス)
「無いです」(以後、沈黙)
「最近サブスクでハマってるドラマがあるんですよ。Aさんは何か観てます?」(話題というボールのパス)
「観てないです」(以後、沈黙)
「夏休み、どこか旅行に行きたいなーと思いましてね。Aさんのおすすめの旅行先とかあります?」(必死のパス)
「特に」(以後、沈黙)
なぜあなたはそこでボールを止めるのか。どんな話題も飲み込んでしまう、話題のブラックホール。
ネタが無いならせめて「札幌行ったことないけど、Bさんはどうですか?」とかパスを出してくれ。ぼくは沈黙が怖いんだ。
飲み会や会話のパス回し、一人一人のドリブル時間の長さは関東と関西で違う。
関東では小刻みにパスを回すしボールを奪いにくるが、関西では一人あたりのドリブル時間が長くボールのキープ時間が長い。自分でドリブルしてオチというゴールまで決めにいく。
それを知らずに関西で関東のサッカーをやると大変だ。
「この間、心斎橋行きのキップ買って」(ドリブル開始、華麗なゴール決めたるで)
「あーそうなんだー。どこ行ったの?」
「アメ村までちょっと行って」
「あーアメ村有名だよね。どこかおすすめの店ある?」
「まあそれはええねんけど、オバハンが割り込んできて」
「おばさんってそういうとこあるよね。おれも昔さあ」
「聞いて聞いて。ほんでそのオバハンがワイの足踏んでてん」
「あーわかるー。オレも前さあ」
「痛い痛いいうたら」
「足踏まれると痛いよねー。そういえばこの間さあ」
「そしたらオバハンが振り返って」
「足、大丈夫?もう痛くない?」
「そしたらオバハンが振り返って『兄ちゃん 毛ー長いから女の子かと思ったやんか もーよー言わんわ』ゆうて」
「え、大丈夫だよ!ミヤウチくん全然女の子に見えないって」
「いちいち割り込んでくんなや!最後まで話させろや!」
こうやって話題のサッカーに失敗して大阪湾に沈められた関東人は何人もいるから、飲み会や会話では気をつけたいものである。
(『カエル先生・髙橋宏和ブログ』2026年6月11日を加筆修正)
















