音楽の好みは13~14歳に決まるという話。
「音楽の好みは14歳の時に聴いていた曲に左右される」という説がある。
ネタ元を掘っていくと、2018年2月10日配信のThe New York Timesの記事が元らしい。
Spotifyのデータを解析すると、男性は13歳から16歳の間、女性は11歳から14歳の間に聞いていた曲が音楽の好みに影響するという。
脳の可塑性などなどの理由もあるのだろうが、非常にわかる気がする。
音楽と青春期について酒井順子氏がこんなことを書いている。
〈音楽等によって刺激される懐かしさは、「その曲がヒットしていた頃の自分」が喚起されるからこその感情であるわけですが、その頃の自分が「未完成」であればあるほど、懐かしさは強まるようです。〉(酒井順子『ガラスの50代』講談社 二〇二二年 kindle版40-41/205)
13歳14歳の頃が懐かしいからその頃の曲を聴き続けるわけでもなかろうが、「未完成」の頃の曲ほど懐かしい、という指摘は美しい。
大人になるだけで人間として完成するわけでもないし完全体になるわけでもない。
しかし大人になればそれなりに、仕事だのなんだので空白は埋まってゆく。
10代の、不完全で未完成で空白だらけでそのくせ溢れんばかりの承認欲求と万能感と劣等感と無力感とその他もろもろがごった煮になったあの時期。何者かになりたい何者にもなれないという思い。真夜中の煩悶。
「自分」というパズルは足りないパーツばかりで、どこかにあるかもしれない足りないパーツを求めて音楽や小説や映画や深夜のラジオやテレビや今だと動画を漁りまくる。漁っても漁っても決して癒えない心の渇き。
そんな時期に貪るように聞いた曲が、生涯に渡る音楽の好みに影響を与えるのは当然かもしれない。
この夏、空白を埋めるべく、足りないパーツを求めて音楽に漫画にアニメに小説に動画に溺れる全ての13歳14歳に祝福を。
どうか良き旅を。
素晴らしい出会いがあることを祈ります。

photoACより