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HCD対談会レポ「麻布という不治の病」

麻布流儀編集部
麻布流儀編集部
date:2018/5/17
HCD対談会レポ「麻布という不治の病」

「麻布という不治の病」は生徒だけじゃない?

 病は必ずしも生徒や卒業生だけではなく、今日も取材でいらしている方もいらっしゃいますが、PTAのお父様お母様方もですね。なんだこの学校はひどい学校だ、と最初は、驚き、不安、焦り、焦燥、最後は諦念、諦めですね。高3の頃は達観という悟りの境地に入るんですね(笑)。だんだん麻布の感染力に侵されて、卒業する頃には麻布ファンになる方が多いんですよね

おおた そうですね、もうファンというか、染まってしまって判断がつかなくなるという感じかもしれませんね(笑)

 麻布の教員もそうですね

おおた あー本当ですね!

 卒業生の教員も最近は増えていますが、そうでない方は、ありえない学校だと思うんですよ

観客(笑)

おおた 最初来た時はやはりそう思うでしょうね

 私が来た頃はまず教室で歌えコールが起こる。まず教員が生徒の前で歌わなくちゃならない

おおた 教室ですね、職員室かと思いました

 そういう儀式があって、ちょっとショックを受けて悩んでしまう先生もいる

おおた 今は女性の先生もたくさんおられますね

 そうですね、今10人いらっしゃいます

おおた これはどんなものなんだろう、大丈夫なのかと本当に心配してしまいますね(笑)

 男女機会均等で、男性僕らの頃はいなかったですが、面接をすると男性の方が草食系で頼りないですが、女性の方が知識も胆力もあってこれはこれからの時代やはり女性だと思いますね。初めての先生は最初カルチャーショックを受けるんですが、先生も自由に自分の授業ができるとか、あるいは生徒のアクティブラーニングなんかも今盛んで本当にアクティブに教室の中を走り回っている

おおた はい、これが本当のアクティブラーニング、っていう平さんの十八番のネタですね(笑)

平 まぁ、そのように楽しくやれているという感じで、教員も病に侵されているそういう構造があるんですね(笑)

おおた 先ほど保護者の話がありましたが、保護者も麻布に入れる保護者というのは小学生の頃は真面目に勉強するようにしてきていると、先ほどおっしゃってましたが、たぶんでも麻布に入れる保護者というのはやはり麻布のこの校風を理解していて、あ、でも理解していてもショックを受けるというのはあると思うんですが。僕が思うには麻布が戦後の新制の中高一貫の体制が整ってからずーっと東大トップテンに入り続ける学校と形容詞的に、枕詞のようにつき続けていますが、と言っても1番になったことはない。でも僕はこれは奇跡的に非常にいいことなんじゃないかなと感じていて、1番になってしまうと、東大に1番入っている学校として翌年からそれだけで麻布に入ろうという人が増えてしまう。ごそっと。そういう価値観になってしまう。なんでこんな受験に関係なさそうな授業をしているんですかという質問をするような保護者が一定数来てしまう。それがずっと一番にならない麻布、わざとだと思うんですけれど(笑)

観客(笑)

おおた だからこそこの麻布の文化が保たれてると思うんですよ。実は旧制1中2中もそうなんですよね。旧制一中はトップ校で、旧制二中もそれを追い越そうと頑張っている。旧制3中というところに本当に面白い学校が多いというのが地方でそうだったんですね。二番手、三番手につけているということで麻布の定位置として、麻布が麻布らしくあり続ける必要な条件なのではないかということで、あまり頑張りすぎないで(笑)なんて思うんですね

 もちろん男の子にとって進学は大事なことなんですけどね

おおた 校長の口から言いにくいことですよね(笑)

 おおたさんとの最近の対談でも言いましたが、愛と誠が基にあって、立派な青年を育てるということがやっぱり学校の一番大事なことだと思います。なかなか世の中からは見えないですけれど、毎週夜遅くまでやる職員会議

おおた それなんですよ!それって取材できないですかね?本当、思うのが、麻布とか他の学校とか似てるって言ってますが、麻布に新しい先生が入ってきてもそうやって麻布に染まっていくというのはやはり僕はこの職員会議にあると思っていて。ここで各学年ではなくて全先生が全学年で起こっているいろいろな問題を共有して、また校則がないからこそ、毎回どうするかということを一から論議しなくてはならない。この議論のロジックっていうか、いろいろな先生の価値観がある中で、これという正解はないのだろうけれど、納得解を得るために何時間も全教員が関わって話をする中で、若い先生たちもあーこういう考え方をするんだ、そういう文化なんだなぁと染まっていくんではないかと。他校なんかでもすごく自由な学校に見えたりするんだけれども多分学年だけで処理していたりする。全教員が何時間も今の働き方改革的に言ったら無駄な会議って言われそうですが、実は無駄じゃない。これが文化を継承する一つの装置になっているんじゃないかって思うんです。だからいつか職員会議の様子ってのを見てみたいと思ってるんですよね

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